column
コラム
いまや、CO2排出削減に次ぐグローバルなテーマといえる「脱使い捨てプラスチック」。日本で、とりわけ取り上げられることの多い「レジ袋」を糸口に、これからのプラスチック製品との関わり方を模索する、特集の最終回。
世界で消費されるレジ袋、年間最大5兆枚
2018年6月。G7シャルルボワ・サミットで、日本とアメリカを除く5カ国が海洋プラスチック憲章に署名する数日前、国連環境計画(UNEP)は「Single Use Plastics: A Roadmap for Sustainability.」と題した報告書を発表した。
それによると、世界全体のプラスチック製レジ袋の消費量は、毎年1〜5兆枚にものぼる。その一方で、この流れに歯止めをかけようと、レジ袋や発泡スチロール製品の製造・販売を禁止、または何らかの規制を行う国の数もまた、60カ国を超えている。
各国の取り組みとは具体的にどのようなものか、見ていくことにしよう。
「厚さ制限に、デポジット制…」国別規制のイマ
2018年10月に、レジ袋を含む一部使い捨てプラスチック製品の禁止法案が承認された、欧州連合(EU)。加盟国のイタリアでは、すでに2011年から生分解性以外のレジ袋が禁止されている。フランスも、2016年7月に無料配布のレジ袋を禁止し、有料であっても、厚さ(50ミクロン以上)や、素材に制限が課されている。EU離脱で揺れるイギリスは、2018年に25カ年の環境行動計画を発表。使い捨てプラスチック製品の販売が、早ければ2019年にも禁止される。
北欧では、スウェーデンやノルウェーが、ペットボトルなどにデポジット制度を導入。ちなみに日本でも、スポーツメーカーのパタゴニアが、2009年からレジ袋に同様のデポジット制度を導入している。
アメリカは、ハワイ州全域とカリフォルニア州のほか、ボストン、シアトルなどの都市で使い捨てレジ袋を禁止。オーストラリアは、今年7月に全土で使い捨てレジ袋を禁止したが、スーパーマーケットで有料化に反対した客がトラブルを起こすなど、移行の難しさにも直面した。台湾は、コンビニをはじめ14の分野でレジ袋の無料提供を禁止しており、有料も繰り返し使用できるものに限られている。同様の取り組みは、中東(UAEなど)、アフリカ(ケニアなど)、南米(チリなど)でも行われており、まさに枚挙にいとまがない。
「循環型社会」そこに国境はあるか?
こうした全世界的な動きが評価される一方で、プラスチックをめぐる新たな問題も起きている。
2017年末に、それまで廃プラスチック(以下、廃プラ)の最大の受け入れ先であった中国が輸入を規制したことで、日本を含む各国で、廃プラの滞留が深刻化しているのもその一つだ。
2018年上半期には、タイ、マレーシア、ベトナムなどで、廃プラの輸入量が激増(2017年比)し、これらの国が相次いで輸入の禁止、規制措置をとる事態となった。行き場を失った廃プラは東南アジアに流れていたとみられる。
こうしたさなか、「他国から800万トン近いゴミが自国に漂着している」として日本や中国などアジアの国々を非難したのが、アメリカ、トランプ大統領だ。
たしかに、中国を含むアジア5カ国が海に排出するゴミの総量は、その他の国々の排出量を上回っているとの調査データもある(アメリカ 海洋保護センター/2017年)。
しかし、だからといって、アジアだけに問題があるとも言い切れない。アメリカは廃プラの輸出量で上位に名を連ねている。廃プラは言うまでもなく「資源」として売却されるわけだが、見方によっては、自国のゴミを他国へ押し付けているともとれるのではないか。もちろん、これはアメリカに限った問題ではない。
循環型社会は国境の内側だけで成り立つものではない。海は繋がっているし、大気は地球全体を覆っている。世界の足並みはいま、そろっているだろうか。
2018年11月、トランプ大統領は「現在、この国はこれまでで最も清潔な状態にある」と自国を評価している。