column

コラム

[第四回]
どう違う?生分解性プラスチックとバイオマスプラスチック

2018年12月18日公開 / 2019年10月16日更新

どう違う?生分解性プラスチックとバイオマスプラスチック

いまや、CO2排出削減に次ぐグローバルなテーマといえる「脱使い捨てプラスチック」。日本で、とりわけ取り上げられることの多い「レジ袋」を糸口に、これからのプラスチック製品との関わり方を模索する、特集の第四回。

拡大するバイオプラスチック市場

化石燃料に代わる資源として、世界中から熱い視線を注がれている、バイオプラスチック。
国内では2018年6月に、2030年までにバイオマスプラスチックの国内出荷量を197万トンまで増やすことを明記したスキームが閣議決定され、話題を集めた。この目標はその後、「レジ袋有料化」なども盛り込まれた「プラスチック資源循環戦略」に引き継がれている。

ある民間の調査会社によると、国内における2017年のバイオプラスチックの市場規模は、約4万800トン(国内出荷量ベース)。先ほどの目標値と照らし合わせれば、その市場規模は、今後10年ほどで約50倍に膨れ上がる見込みとなる。
しかし、話はそう単純ではない。バイオプラスチックとは、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの総称であるのに対して、国が示したのは、あくまでバイオマスプラスチックにおける数値にすぎない。

このように、バイオプラスチックを語るさい、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックはいっしょくたにされることが多いのだが、情報を読み解くには、その違いを意識することが肝要になる。では、その違いとはなにか?

国内のバイオプラスチックの市場規模は今後10年ほどで約50倍に膨れ上がる見込みとなる

生分解性とバイオマス。それぞれのポイントは?

まずは、生分解性プラスチックについてみていく。
このプラスチックは、従来のプラスチックと同様の使い勝手でありながら、使用後に(1)酸化または加水分解による低分子化と、(2)微生物や酵素による分解というステップを経て、二酸化炭素と水に還るという特性を持つ。

「生分解性」という言葉の響きから、植物由来のプラスチックと思われがちだが、必ずしもそうではない。石油資源が原料であっても、生分解性を有するものはある。
また、微生物が介在するプロセスゆえ、分解には一定の時間を要する。分解するといっても、それは「捨てると即座に自然に還る魔法」ではないし、ましてや使い捨てやポイ捨てを肯定するものでは決してないのだ。

次に、冒頭でも触れたバイオマスプラスチックについて確認する。
このプラスチックは、その原料にトウモロコシやサトウキビといったバイオマス(生物資源)由来の物質が含まれているのが特徴だ。
焼却時に新たな二酸化炭素が発生せず、地球温暖化防止への貢献も期待されている。なぜ二酸化炭素の心配がないのかといえば、バイオマスを燃やした時に出るそれは、もとをたどれば、大気中から生物が取り込んだものであるため、差し引きゼロになるからだという。

先ほどの「生分解性」についても、バイオマスプラスチックの特徴としてとりあげられることがある。たしかにPLA(ポリ乳酸)などはバイオマスプラスチックであり、かつ生分解もする。しかし、中にはそうでないものも存在するため注意が必要だ。バイオマスであれば、必ず自然に還るわけではない。
また、その名前とは裏腹に、バイオマスプラスチックであっても、石油由来の原料が含まれているものも多い。日本バイオプラスチック協会によれば、バイオマスプラスチックか否かは、その含有率が25%以上かどうかで識別される。

バイオマスプラスチックは原料にトウモロコシやサトウキビといったバイオマス(生物資源)由来の物質が含まれている

イメージに振り回されることなく……

第3回の特集で、私たちは「エコバッグだからといって、必ずしもエコとは限らない」ことを確認した。バイオプラスチックにも同じことが言える。「生分解性」「バイオマス」といった言葉のイメージだけを消費し、その処理方法を誤るようでは、たとえバイオプラスチックであっても、逆に環境を汚染してしまうかもしれない。
製品を手にした時に、「これは、どういう素材でできているか。私はこれをどう扱うべきか」と意識的に問うことが、今後ますます求められるだろう。

これをどう扱うべきかと意識的に問うことが求められるだろう

REQUESTリクエスト

取り扱い希望の話題や企画、
調べて欲しいことがございましたら、
お気軽にリクエストください。

リクエストフォーム